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工事台帳とは——建設業法が義務づける帳簿と5年・10年の保存期間

工事台帳は管理表である前に建設業法第40条の3の帳簿です。施行規則第26条が記載事項を、第28条が5年と10年の保存期間を定め、第55条第5号が十万円以下の過料を科します。起点は引渡しの日です。

Zirko Redaktion公開日: 更新日: 読了目安 9分

案件の事後原価計算の画面。左に原価合計と計画原価との差がリングとともに表示され、右に労務費・材料費・機械費・外注費・その他の費目ごとの消化率が棒で並び、さらに右側に現場からのチャットが日付つきで続いている。
目次

工事台帳という名前の書類を名指しした条文は、建設業法のどこにもありません。それでも備えていなければ十万円以下の過料です。第55条第5号が並べているのは四つの態様で、どれか一つに当たれば足ります——「帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿若しくは図書を保存しなかつた者」。

つまり義務の対象は「帳簿」であり、工事台帳はその帳簿を工事ごとに並べ替えた形です。この二つを同じものだと思っていると、管理表としてはよくできているのに法定の記載事項が二つ三つ抜けている、という台帳ができあがります。

義務の条文は一行しかない

「建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その営業所ごとに、その営業に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、かつ、当該帳簿及びその営業に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。」 — 建設業法 第40条の3

読みどころは「営業所ごとに」です。工事ごとではありません。本店と支店があれば、それぞれの営業所が自分の扱った工事について帳簿を持ちます。中身は国土交通省令、すなわち建設業法施行規則第26条第1項が四つの号で列挙しています。

記載事項は四つの号に分かれている

第一号は営業所の代表者の氏名と、その者が代表者となった年月日。残りの三つは契約の相手方ごとに分かれます。

第二号——注文者と締結した請負契約について。 請け負った建設工事の名称および工事現場の所在地/注文者と請負契約を締結した年月日、注文者の商号・名称・氏名および住所、注文者が建設業者であるときはその許可番号/完成を確認するための検査が完了した年月日、および目的物の引渡しをした年月日。

第三号——発注者と締結した住宅を新築する建設工事について。 当該住宅の床面積、建設瑕疵負担割合、住宅瑕疵担保責任保険法人の名称。宅地建物取引業者は発注者から除かれます。ここだけ保存期間が倍になるので、後述します。

第四号——下請負人と締結した下請契約について。 工事の名称と現場所在地、契約年月日、下請負人の商号・名称・住所と許可番号、検査完了と引渡しを受けた年月日。そしてニ号が、特定建設業者が注文者となる下請契約についてさらに四つを求めます——支払った下請代金の額・年月日・支払手段、手形を交付したときはその金額・交付日・満期、一部を支払ったときはその後の残額、遅延利息を支払ったときはその額と支払日。

この最後の四つは、単なる記録ではなく建設業法第24条の6の支払期日と年14.6パーセントの遅延利息を自分で検算するための欄です。支払日を書く欄がある帳簿は、遅れたことにも気づきます。

第二号の見積段階から一貫して書けるように作っておくと、あとで拾い直しになりません。見積書に工事の種別ごとの材料費・労務費その他の経費の内訳を書くのは建設業法第20条第1項の努力義務ですが、その内訳がそのまま工事台帳の原価欄になります。

添付書類は三つ、そして省略の規定がある

第26条第2項が挙げるのは三つです。第19条第1項・第2項による契約書面またはその写し。前項第四号ロの下請契約が特定建設業者の下請契約であるときは、支払った下請代金を証する書面またはその写し。施工体制台帳を作成しなければならない工事については、その施工体制台帳のうち主任技術者・監理技術者の氏名と資格、下請負人の商号と許可番号、下請工事の内容と工期、下請負人が置いた主任技術者の氏名と資格が記載された部分。

そして第4項が実務的に効きます——添付した書類に第1項各号の事項がすでに書かれているときは、帳簿の当該事項を記載すべき箇所と当該書類との関係を明らかにして、記載を省略できる。契約書の写しを綴じてあるなら、契約年月日を台帳に書き写す必要はない。関係を明らかにして、が条件です。どの契約書のどこか、が台帳から辿れること。

5年か10年か——起点は引渡しの日

保存期間は第28条が二項に分けて定めています。

帳簿と添付書類(第1項)は、請け負った建設工事ごとに、当該建設工事の目的物の引渡しをしたときから5年間。ただし請負契約に基づく債権債務が消滅した場合は、その消滅したときから数えます。そして発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものは10年間。

図書(第2項)は、引渡しをしたときから一律10年間。ここでいう図書は第26条第5項が挙げるもので、完成図、工事内容に関する発注者との打合せ記録、施工体系図、第20条第1項の材料費等記載見積書、そして契約締結前に作成した見積書の内容に関する打合せ記録です。元請か、施工体制台帳の作成建設業者か、それ以外かで、どれを保存するかが変わります。

起点が契約日でも決算日でもなく引渡しの日であることに注意してください。会計の保存期間はすべて事業年度基準なので、同じ工事の書類が二つの数え方で並ぶことになります。

同じ工事の書類に、三つの法律が別々の年数を課す

何を何年起点根拠法令
帳簿と添付書類5年(発注者と結んだ住宅新築工事は10年)目的物の引渡し建設業法施行規則 第28条第1項
完成図・打合せ記録・施工体系図・材料費等記載見積書10年目的物の引渡し建設業法施行規則 第28条第2項
交付した適格請求書の写し7年交付日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日消費税法施行令 第70条の13第1項
法人の帳簿書類7年(青色申告で欠損金が生じた事業年度は10年)確定申告書の提出期限の翌日法人税法 第126条・第150条の2、同施行規則 第59条ほか

表の使い方は一つだけです。いちばん長い年数に合わせて一箇所にまとめる。 工事ごとのフォルダを引渡し日から10年、と決めてしまえば四行とも満たされます。書類ごとに年数を管理しようとすると、五年目に捨てたものが十年目に要る、という事故が起きます。適格請求書の写しの7年がその典型で、これは建設業法の帳簿とは別建ての義務です。

エクセルで足りるか——条文は「足りる」と言っている

この問いには条文がそのまま答えています。

「第一項各号に掲げる事項が電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体に記録され、必要に応じ当該営業所において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面又は出力装置の映像面に表示されるときは、当該記録をもつて法第四十条の三に規定する帳簿への記載に代えることができる。」 — 建設業法施行規則 第26条第6項

第7項は添付書類のスキャナ保存について、第8項は第5項の図書について、同じ形で認めています。条件は媒体ではなく当該営業所で、必要に応じ、明確に表示できること。したがって「エクセルは違法」という説明は条文に反します。

壊れるのは合法性ではなく、別の三つです。

一つ目は、引渡し日起点の5年という数え方。 表計算の台帳はたいてい年度ごとのファイルになります。ところが期間は工事ごとに、引渡しの日から独立に走る。二〇二六年三月に引渡した工事は二〇三一年三月まで、同じファイルの中の別の工事は別の日まで。年度でファイルを閉じる運用と、工事で期間を数える条文が噛み合いません。

二つ目は、添付書類との関係。 第26条第4項の省略は「関係を明らかにして」が条件です。契約書のPDFがどこか別の共有フォルダにあり、台帳のセルからは辿れない——これは省略の要件を満たしていません。

三つ目は、合計が合わなくなること。 下請代金の支払額、手形の満期、残額、遅延利息。四つを手で転記していると、必ずどこかで一件ずれます。ずれた台帳は、過料の条文でいう「虚偽の記載」とまでは言われなくても、支払期日の計算根拠としては使えません。

法定帳簿の工事台帳と、原価管理の工事台帳

実務で「工事台帳」と呼ばれるものには、もう一つの顔があります。原価管理の台帳、つまり一件の工事にいくらかかったかを費目ごとに積み上げる表です。

この二つは重なりますが同じではありません。法定帳簿が求めるのは契約の事実——誰と、いつ、いくらで、いつ引き渡したか。原価管理が求めるのは費目ごとの実績——労務費、材料費、機械費、外注費、その他。法定帳簿に原価は要りませんし、原価表に注文者の許可番号は要りません。

それでも同じ台帳に載せる価値があるのは、両方とも工事ごと・引渡し日起点だからです。保存の単位が同じなら、置き場所も同じにしたほうが五年後に探せます。費目の側をどう立てるかは実行予算の作り方に譲りますが、法定側から見た要件は一つだけ——工事の識別が両方で同じであること。工事名が台帳では「〇〇邸改修」、原価表では「〇〇様邸」になっていると、五年後の照合に一日かかります。

引渡しの日から数えてみる

二〇二六年九月三十日、渋谷区の物件を引き渡したとします。注文者は法人、住宅の新築ではない。

  • 二〇二六年九月三十日——ここから5年が走り始めます。帳簿の第二号ハ、「検査が完了した年月日」と「引渡しをした年月日」の二つを書き込む日です。二つは別の日になることがあり、別なら別に書きます。
  • 二〇二六年十一月——下請代金を支払います。第四号ニの四項目をこの時点で書く。手形なら満期も。後から思い出して書くと、支払手段が抜けます。
  • 二〇二七年五月——決算。法人税法側の7年はこの申告期限の翌日から走り始めるので、同じ工事の書類に二本目の時計が付きます。
  • 二〇三一年九月三十日——建設業法側の5年が満了。ただし図書(完成図、打合せ記録、施工体系図、材料費等記載見積書)は二〇三六年九月三十日までです。ここで一括して捨てると、第55条第5号の「保存しなかつた者」に当たります。

工事台帳に「引渡日」という一列があり、そこから計算された保存期限がもう一列あるだけで、この四つの日付はすべて自動で並びます。無い台帳では、五年後に誰かが思い出すかどうかに賭けることになります。

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2026年9月24日時点の法令に基づきます。この記事は条文の内容を説明するもので、個別の事案についての法律相談・税務相談に代わるものではありません。建設業法と同施行規則は近年たびたび改正されており、帳簿の記載事項と添付書類は改正の対象になりやすい部分です。許可の更新や決算変更届の前には、e-Gov法令検索で第26条と第28条の最新の条文を確認してください。

Zirkoがここでしていること:案件ごとに、注文者・現場の所在地・期間・帳票・報告書・原価が一つの画面にまとまります。原価は労務費・材料費・機械費・外注費・その他の費目で積み上がり、見積書の原価計算を計画原価として実績と並べて表示します。していないこと:Zirkoは第40条の3の法定帳簿を代わりに作りません。記載事項のうち許可番号、検査完了日、手形の満期といった欄は標準の入力項目になく、保存期限の自動計算もありません。どの工事がどの年数に当たるかの判断は、事業者自身のものです。

よくある質問

工事台帳は法律で義務づけられていますか。

「工事台帳」という名前の書類を名指しした条文はありません。義務づけられているのは帳簿です。建設業法第40条の3は「その営業所ごとに、その営業に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、かつ、当該帳簿及びその営業に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない」と定め、記載事項は同法施行規則第26条第1項が四つの号で列挙しています。工事台帳は、この帳簿を工事ごとに整理した形です。

備えていなかった場合の罰則は。

建設業法第55条第5号により、十万円以下の過料です。条文は「第四十条の三の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿若しくは図書を保存しなかつた者」と、四つの態様を並べています。備付け・記載・真実性・保存のどれが欠けても同じ扱いです。

工事台帳は何年保存しますか。

建設業法施行規則第28条第1項により、請け負った建設工事ごとに、目的物の引渡しをしたとき(請負契約に基づく債権債務が消滅した場合はその消滅したとき)から5年間です。発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものは10年間。さらに同条第2項で、第26条第5項の図書(完成図、打合せ記録、施工体系図、材料費等記載見積書など)は引渡しから10年間です。

エクセルで作った工事台帳でも法令上は足りますか。

足ります。建設業法施行規則第26条第6項は、記載事項が電子計算機のファイル又は電磁的記録媒体に記録され、必要に応じ当該営業所において明確に紙面又は出力装置の映像面に表示されるときは、その記録をもって帳簿への記載に代えることができると定めています。条件は保管場所ではなく「当該営業所で表示できること」。第7項は添付書類のスキャナ保存、第8項は図書の電磁的記録も同様に認めています。

工事台帳と施工体制台帳は同じものですか。

別です。施工体制台帳は建設業法第24条の8第1項の書類で、発注者から直接請け負った特定建設業者が、下請契約の請負代金の総額が政令で定める金額以上になるときに作成し、工事現場ごとに備え置くものです。工事台帳は営業所に備える帳簿の側。ただし施行規則第26条第2項第3号により、施工体制台帳のうち技術者名や下請負人に関する部分は帳簿への添付書類になります。

帳簿に必ず添付しなければならない書類は何ですか。

建設業法施行規則第26条第2項が三つを挙げます。第19条第1項・第2項による契約書面又はその写し、特定建設業者が注文者となる下請契約については支払った下請代金を証する書面又はその写し、そして施工体制台帳を作成しなければならない工事についてはその一部です。第4項により、添付書類にすでに記載事項が書かれているときは、対応関係を明らかにして帳簿側の記載を省略できます。

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